出会い

 

 7月31日

 

晴れた日のお昼前、わたしはウォーキングに出かけた某駅のホームの端にある喫煙コーナーで一服していました。
すると、足元から「ぴぃっぴぃっ」という鳴き声がします。線路をのぞき込むとなんとつばめのヒナが!!
はつかねずみ程の大きさでまだ歩くのもよちよち歩き、わたしがのぞいているのを見つけると、転びながらこちらに近寄ってきて、わたしの顔をみて一層大きな声で鳴き始めました。

    

 

なんでこんな所につばめが?上を見上げても巣などありません。
10メートルほど離れたホームの梁に巣があり、よく見えませんがヒナがいるようでした。
でもそんな離れた所からこのよちよち歩きで人の行き交うホームを踏まれずに歩いてきて、線路に落ちたのでしょうか?
線路は真夏の太陽が照りつけています。日に焼かれた線路の敷石の上はどれくらいの温度になっているでしょう。ヒナはとても暑そうです。
その駅は終着駅で、ヒナが居た場所は、線路の電車止まりの外、つまり電車が来ない場所でした。
しかしヒナは、だんだんと電車の来るほうへ歩き出しました。このままでは電車に轢かれてしまう!

わたしは駅長室に向かい、駅員さんにつばめを助けてくれるように頼みました。ところが、駅員さんに「つばめは人が巣に返したヒナは育てない、何度巣に返しても落とされるので、可哀相だがそのままにしておくしかない。もしお客さんが飼ってくれるなら拾う」と言われてしまいました。

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(後でわかったことですが、人間が巣に戻すことは可能だそうです。
親をおどかさないように、餌をとりに行っている間に戻してやると良いそうです。このとき、巣に居る別のヒナが驚いて飛び出さないように注意してください。また、親鳥に見つかりやすい所に簡易の巣を設置してヒナを入れると、鳴き声を聞きつけて親鳥がやってくるそうです。ただし、親鳥によってヒナが落とされる事もあり(口減らしのためやヒナに異常がある場合など)この場合は親鳥による子育ては望めません)

しばらく考えました。つばめの事なんて何も知りません。春に来て秋に南に帰って行く鳥だというくらいの知識しかありません。
拾っても育てられるか分かりません。しかし、そのままにしておけば、暑さで弱って死ぬか、電車に轢かれてしまうでしょう。
やはり見殺しにすることは出来ず、拾ってもらう事にしました。

  

手のひらに乗せるとおとなしくうずくまりました。とてもあったかい、というか熱い!(つばめの体温は約40度あるとされています)
体長5〜6センチくらい、まだ体中ねずみ色のふわふわのうぶ毛と白っぽい管状のものが生えています。(これは羽管といい、これが割れて中から羽根が出てきます)
目を閉じてだらりと首を伸ばしています。鳥の事は何も知らない私でも、あまり良い状態ではないように見えます。
しかし駅員さんがくれた小さな箱入れると立ち上がり、大きく口を開けて「ちゃーちゃーちゃー」という餌をねだる声をだしました。これならなんとか餌は食べてくれそうです。

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電車の中は冷房がきいているので、持っていた厚手のハンドタオルでヒナを覆い、箱の上に風よけに帽子をたたんでのせると、静かになりました。
とにかく家に帰って何か餌を与えなければ、と電車に乗りました。

電車の中では静かにしていました。この子はこれからどうすればいいのか?
小学生の頃、一度友達と弱っていたスズメの子を拾い、クラスで育てた事を思い出しました。
その時はなにかどろどろした餌やインコの餌のような物を与えて飛べるようになったので校庭に放しましたが、つばめはスズメとは違うので、餌も違うかもしれないし、育て方も同じようには いかないでしょう。
色々考えると途方に暮れる思いでした。
でもひとつ決意した事は、何とか飛べるようにして、空へ返してやる、という事でした。
そして、このつばめはペットとして飼うのではなく、あくまで自然から預かったものだという思いから、名前は付けないことにしました。

 

 

 

 

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